第62章 エンカウント
「んー、楽しみだなあ。と言っても私は六年間通えなかったからちゃんと覚えてもらえてるか少し心配。」
優「そんな心配は、」
勇「桜なら大丈夫だよ!!」
桜は勇之の不自然な声量に目を丸くする。
勇之は普段穏やかな男だったが、自身の事になると人が変わったようになる事を桜は知っていた。
「お父さん、立道くんはお友達だよ。さっき告白されたけどきちんと断ったし、お友達でいようねって決めたの。」
優「一ノ瀬さん……、」
勇之はズバズバと悪気無く言う助手席の桜と項垂れる後部座席の優介を見て状況を把握する。
勇(この男、諦めていないな。でも…、)
勇「そうか!お友達か、それはいいなあ。よろしくね、お友達の立道くん。お友達らしい付き合いをしてね、お友達なんだから。」
優「……………………はい…。」
「お父さん、今お友達って何回言った?」
それから元々口数の少ない優介は喋らなくなり、勇之は桜と楽しそうに話しながら桜の母校近くの店まで車を走らせた。
優「あ、ここの店です。」
勇「桜、気を付けるんだよ。じゃあ帰る頃また連絡しなさい。立道くんも気を付けなさい。」
「うん。ありがとう、お父さん。」
優「は、はい……。」
優(気を付けなさいって…、今のトーンは接し方を気を付けなさいって意味合いだったな……。)
勇之は桜達が店に入ったのを確認すると再び車を走らせた。