第62章 エンカウント
「……っ!!!」
桜は自身が知らない男とキスをする動画を見てスマホを取り落としそうになった。
(………………え…自撮り…?これ、どこ…?この人は……?)
バランサーは桜を元通りにしたつもりであったが、その干渉は桜の肉体にのみであり スマホのデータまでには及んでいなかったのだ。
桜は燃える様な瞳見たさにキスの直前までを何度も再生した。
(誰なんだろう…まだ思い出せてない事があったんだ…綺麗な瞳……。あれ、でも私なんで振り袖を着て、)
勇「桜!!外で待っていたのか!!!」
「お父さん!本当にありがとう。」
桜は気恥ずかしさから頬を染め、スマホを急いでポケットに仕舞った。
勇「危ないだろう、こんな所に一人でいたら攫われてしまうよ。早く車に、」
「あ、待って、立道くんもいい?」
勇「………ああ、別に乗せるくらいは構わないけれど…。」
勇(立道くん…桜が昔からバレンタインの度に手作りし渡さず持って帰ってきていた相手の男の子か……。)
勇之はあからさまに嫌な顔をしたが桜が嬉しそうに笑うと小さく息をついて微笑み返した。
そして桜は優介を連れて店の出口まで行くと皆に向かって大きな声でお別れを言い、捕まる前に急いで店の戸を開く。
「本当にありがとう!!また会おうね!!!」
桜が次もある事を伝えると桜の友人達はそれぞれ笑みを浮かべた。