第61章 戻ってきた世界
(あれ……?お店の中が静かになっちゃった……。)
優「一ノ瀬さん。俺、中学の卒業式の後 一ノ瀬さんに……告白、しようと思ってて…でも勇気が足りなくて出来なかった。高校も同じだからまたチャンスがあるとどこかで思ってたんだと思う。でも一ノ瀬さん転校して、疎遠になっちゃって…、」
優介と桜は同じ中高一貫校に進学していたのだ。
桜は優介の言葉を真剣に聞きながら拳を握る。
優「一ノ瀬さんがいなくなってからずっと後悔してた…目移りする事もなくて…。だから今日一ノ瀬さんが来たのを見て『今しかない』と思ったんだ。…ず、ずっとずっと好きでした。……付き合って…くれませんか。」
大人しく目立とうとしない優介が視線が集まったと分かった後にも顔を赤くさせながら言葉を続けた事に周りの同級生達は目を丸くした。
一方、桜は眉尻を下げたまま真っ直ぐに優介を見つめ返し、無情と言える程すぐに口を開いた。
「ごめんなさい。心に決めた人がいます。」
その言葉に店内が一瞬無音になる。
続いて起きたのは大騒音であった。
桜はわーぎゃー騒ぐ女友達に両腕を引っ張られ、背中を押され、反対の壁際に連れて行かれると尋問にあった。
一方、即答で玉砕した優介は同情する男達に慰められたり称えられたりしていた。