第61章 戻ってきた世界
(嬉しいけどお店の中にちゃんと入りたいかも……。)
―――
なんとか目の前の友人達に一通り挨拶をし終わると既に2時間経っており、桜は2巡目に入る前に飲み物を取りに行くふりをして急いで人だかりから抜け出した。
その際少し離れていた所でずっとこちらを見ていた人物と目が合った。
それは5年前までずっと桜が一途に想い続けていた物静かで読書家の立道 優介だった。
桜は驚いて目を大きくさせた後すぐに懐かしさから少し目を細めてにこっと微笑えんだ。
ドリンクを頼むカウンターに向かう道のりでも男女関係なく様々な人に声を掛けられ、少し疲れてしまっていた桜は『ドリンクを取りに行くからごめんね』と話を切り上げようとしたが代わりに貰ってきた者から手渡されてしまった。
「流石にこんなに持てないや…そこのテーブルに置いてくれるかな…?」
桜がそう言いながら首を傾げて困った様に微笑むと、その笑みが琴線に触れたのか更に飲み物が増えた。
「わ……すごい………。」
桜が立食用の丸いテーブルの上を埋め尽くす飲み物を見渡すと困った様な嬉しそうな笑みを浮かべる。
しかし飲み始めるとすぐに美味しそうに頬を緩ませ、蕩けた顔を晒した。