第60章 決戦の日
杏「こちらで贈ったもの、全てを置いていったのか……。」
杏寿郎の腕の中には着物や洋服、リボンがあり、そして視線の先には消えた左手から落ちた指輪が転がっていた。
杏寿郎はそれに手を伸ばして拾い上げるとじっと見つめた。
杏「君の指は…………本当に、細いな……。」
ユキと小型ランプ、そして力を失わなかった柱達のおかげで、その夜消息を絶った者は産屋敷家の者と桜のみであった。
それから杏寿郎は覇気の無い自身の様子に戸惑う仲間達に桜が無惨と共に此処を去る運命であった事を伝えた。
一方、唯一 桜といつでも繋がれると思い杏寿郎に時間を譲っていたユキは人知れず瞳を揺らしていた。
桜がこの場から消えたと共に桜の胸から追い出されたからだ。
ユ『大神様がそうさせたのか…。いや、これでいいんだ…。これで少なくとも二十歳以降の桜は暴力を振るわれずに済むのだから…。私は信仰してくれる子達に相応しい恩恵を与えながら桜が生まれてくるまで また見えない神を続けよう。』
それから被害の無い完全勝利を喜びながらも鬼殺隊の面々はそれまでに喪った大事な家族や仲間の元へ報告に行ったのだった。