第60章 決戦の日
行「煉獄!!まだ何があるか、」
杏「終わった!!証拠ならここに在る!!!」
そう言うと杏寿郎は桜を横抱きにし、強く抱き締めて膝をついた。
しかしどんなにきつく抱き締めても体は少しずつ消えていく。
「杏寿郎さん、顔を見たいです。見せて。お願い。」
杏寿郎は体を起こすと大粒の涙を流しながら桜の頬を右手で包んだ。
その後ろに実弥としのぶ、無一郎、いつの間にか合流していた継子達も寄って来る。
実「一体、」
杏「すまない、後で説明するので今は……、」
別れを悟ったしのぶは皆の背中を押して二人きりにしてくれた。
去り際、しのぶがチラッと辛そうな表情を浮かべて振り返る。
姉の最期と重なって見えたからだ。
「鬼舞辻、結構しぶといですね。まだ消えないや。」
杏「…………………………。」
「さっきバランサーと話して…生き残る予定だった柱の方は宇髄さんと不死川さん、冨岡さんだけだと聞きました。他の人は出来ない事があると伝えて下さい。それから痣の代償ですが お釣りを貰えることになりました。杏寿郎さん、なんと六十歳まで生きちゃうそうですよ。」
明るい声を出してみたが杏寿郎はただただ顔を顰めて桜の顔を食い入るように見つめていた。
桜は自身を忘れないようにしてくれているのだと分かりつつも微笑みながら辛そうに眉尻を下げた。