第12章 それぞれの想い
そう思うと、"よし!" と気合いを入れ、杏寿郎をお布団へ転がそうと立ち上がる。
「………うぅっ…!」
(重い……!がっしりしてて体も硬いし…や、やっぱり女の子とは違うなあ……。)
なんとか仰向けだったのをうつ伏せにひっくり返すと、布団に入れる事ができた。
「よかった!…よかっ………、」
(杏寿郎さん…何で完全に突っ伏しちゃうんだろう……。)
杏寿郎は枕に顔全面を付けるようにして寝ている。
「こ、これじゃ窒息しちゃう…顔も潰れちゃう…。」
なんとか息ができるように首を横に向けさせようとするも動かない。
(杏寿郎さんは寝起きが異常にいい筈なのに…。)
横向きにしようとしてもバランスがうまく取れないので、仕方なく桜はもう一度仰向けになるように転がす。
布団から寒いところへ転がる杏寿郎はとても可哀想に見えた。
掛け布団をそっとかけ、枕を頭の下に差し込むが、それでも杏寿郎はすやすやと寝ている。
(本当に起きない…心配になるくらい…。)
猫湯たんぽが継続になっている事実を千寿郎が知れば、きっと頑張らせてしまう。
杏寿郎を説得するのはもう無理だろう。
そうなると、杏寿郎が寝た後に桜が部屋から出るのを確認するまで千寿郎は寝られない。
(ただでさえあんなに頑張っているのに…やっぱり千寿郎くんには言えないや…。)
だからこそ千寿郎に見つからないうちに部屋へ戻らなきゃいけない。
だが、先程の面白い寝方を見てから杏寿郎で遊びたくて桜はうずうずしていた。