第60章 決戦の日
「な……っ」
その巨大な仏像が杏寿郎めがけて腕を振り下ろす。
しかし―――、
杏「―――煉獄ッ!!!」
杏寿郎は自身の姓を叫ぶと地を蹴り 氷の仏像の攻撃をすり抜け、そして次の瞬間――皆が気が付いた時には童磨の首を斬り落としていた。
「………き…斬った……っ!斬った!!やりましたね、杏寿郎、さ…ん………、」
笑みを浮かべて振り返った杏寿郎の頬には燃える炎のような痣が発現していた。
杏「うむ!!まだ油断してくれていて良かった!奥義の "煉獄" はそう易々と放てる技ではないのでな!!」
「そう、なのですか。あの、杏寿郎さん…、その痣は一体……、」
杏「む、出たのか。」
走り寄ってきた天元としのぶは鬼を斬ったにも関わらず 杏寿郎の頬を見て複雑そうな顔をする。
その様子から桜の胸の奥がざわついた。
(柱の三人は知ってる。私は聞いてない。柱合会議で出た情報…?何で二人とも妙な表情を浮かべているの……?)
そんな四人から少し離れた所で伊之助とカナヲは母親と姉を思い出して泣いている。
杏寿郎は桜の頭を優しく撫でると少し眉尻を下げて微笑んだ。
杏「隠していてすまない。発現しない場合もあったので敢えて話さずにいた。」