第60章 決戦の日
―――ギィンッ
扇と赤い刀がぶつかる。
目で辛うじて皆の動きを追っていた桜はその音で固まっていた体を震わせた。
(……杏寿郎さん、鬼が動く前にこっちに向かってきてくれてた…。)
杏「桜が君にとって目障りなのは分かるが彼女に傷を付けるのは厄介だぞ。」
童「桜ちゃんか。可愛い名前だなァ。」
童磨が桜の名を呼ぶと杏寿郎の額に青筋が浮かぶ。
杏「失言をした。名を教えてしまうとは…。だがもう二度と呼ぶ事は敵わないだろう!!炎の呼吸、伍ノ型――炎虎ッ!!!」
至近距離から繰り出される力強い大技に童磨は笑みを消して後退った。
そこに後ろから来ていた天元がすかさず刀を振るう。
天「音の呼吸、肆ノ型――響斬無間!!」
ヌンチャクの様に振り回す事で出来た、斬撃と爆発の壁が童磨の退路を断った。
そこへしのぶ、カナヲ、伊之助がすかさず連撃を与えて動きを乱す。
童磨は鬱陶しそうに眉を顰めそれを捌き、それによって生まれた隙を突いて杏寿郎は更に踏み込んだ。
其処に居る皆が杏寿郎の動きに期待の眼差しを向ける。
しかし 追い込まれた童磨は先程までと打って変わった無表情で見上げる程の大きな氷の仏像を生み出した。