第60章 決戦の日
「伊之助くん…お母さんの記憶があるんだね。あの鬼、しのぶちゃんのお姉さんの仇でもあるの。しのぶちゃんも、あの女の子も、私と似た容姿のカナエさんを想いながら戦ってる。」
それを聞いて改めてしのぶに目を遣ると、伊之助はしのぶと桜に抱いていた既視感は母親を覚えていたからであったことに気が付いた。
「……伊之助くん。伊之助くんも二人みたいに戦える?怒りは持ってて良い。でもさっきみたいな無茶な動きはダメ。味方の邪魔もしちゃう。」
伊「…………………出来るに決まってんだろ。」
そう言う伊之助はもう激情していなかった。
桜はそんな伊之助が被り物をする前に鼻先で頬を優しく撫でた。
「頑張って。見守ってるからね。」
一方、すぐに戻って来ようとする伊之助を見て童磨は眉をひそめた。
童「本当に人間が鬼みたいに再生しているね。柱を足止め出来ればそれでいい予定だったんだけど…、 "あれ" は別かな。」
そう言うと童磨は床を蹴って一気に桜との距離を詰める。
天元はそれに何とか食らいつき後を追ったが止めるまでに及ばない。
しかし、童磨が桜に手を掛けるより前に杏寿郎が桜の前に立ちはだかっていた。