第60章 決戦の日
(大丈夫、…大丈夫。杏寿郎さんは強いもの。お館様だって…きっと無事だわ。早く行きたいけど成田さんが気絶していた以上私が監督して組み立てなきゃ…早くライトを持って行って組み立てて怪我人を救って鬼舞辻の邪魔をして…、それから、それから…落ち着いて……大丈夫…、)
槇「馬鹿娘。落ち着け。何て顔をしてるんだ。」
桜はその言葉にハッとする。
自身がどの様な顔をしていたかは分からなかったが、落ち着こうとしていた筈の自身の息は酷く浅くなっていた。
槇「息を吸うだけではなくよく吐け。吐かなければきちんと吸えん。」
そう言われると桜は肺にずっと残っていた空気を押し出すように吐き出してから新鮮な空気を吸う。
それだけで視野が広がった気がした。
「…ありがとうございます。」
槇「今のうちに聞いておこう、千寿郎に伝える事はあるか。」
そう言われて初めてもう千寿郎に会えない事を自覚し 桜は石で頭を殴られたかのような衝撃を受ける。
「……槇寿郎さん…良いこと言ったと思ったら壊しちゃうんだから……。でも、確かに今のうちに残すべきですね。そうだなあ…、大好きだよ、ご飯おいしかったよ、またお姉さんになるから待っててね、あとは…、」
槇「……浅い言葉だな。他にないのか。」
「うぅ、いざ訊かれると出てこないです…。」
そんな会話をしながらも速度は落とさず、槇寿郎と桜は隠達と共に懸命にライトの部品を運んだ。