第59章 決戦に向けて動き出す
杏「……何処へだ。」
「言えません。」
杏「何を…君は一人で行けないだろう。」
「それは槇寿郎さんと、」
杏「駄目だ。俺が行く。今夜は…駄目だ。なるべく離れたくない。……なるべく最後まで一緒に居てくれ、頼む。」
胸騒ぎから今夜決戦が起きる事を、そして桜が居なくなる事を感じていた杏寿郎の懇願を桜は突っぱねる事が出来なかった。
「……分かりました。でも槇寿郎さんには分かられないようにして下さい。秘密にするように言われているんです。」
二人は重たい空気の中 黙ったまま支度をし、固く手を握り合うと離れを出ようとする。
しかしこれが最後かもしれないという考えがよぎると二人は立ち止まり、桜は堪え切れずに杏寿郎の胸に顔を埋めた。
杏寿郎は眉を寄せながら桜を抱き締めると目を閉じ、優しく頭を撫でる。
そして体を離すと優しく額に口付けを落とした。
杏「……桜。」
「…はい。行きましょう。」
離れを出た二人の顔から弱い色は消え失せていた。
一方、元炎柱である槇寿郎は布団の中で二人の気配を感じ取り薄く目を開いた。
そして手早く身支度を終えて庭へ降りると驚く二人を呼び止める。