第59章 決戦に向けて動き出す
(お館様のお屋敷に……鬼舞辻が来るってこと…?何で……、杏寿郎さんは知ってるの……?)
槇「質問も他言も無しだ。明日、用意が出来次第お館様の元へ運ぶぞ。」
「…………分かりました。」
その夜、明日に準備が整うと決まったにも関わらず、突如 胸騒ぎに襲われた桜は寝付けなくなっていた。
杏寿郎も何かを感じ取ったのか桜を抱こうとせず、只々きつく抱き締めている。
それはまるで存在を繋ぎ止めようとしているかのようで桜の胸はツキツキと痛んだ。
「…………………杏寿郎さん。」
沈黙を破って桜は杏寿郎の名を口にした。
杏寿郎は返事をせず再び腕に力を込める。
「もしかしたら、」
杏「桜。待ってくれ。まだ…、」
杏寿郎はその続きを言えず飲み込んだ。
桜は辛そうに顔を歪める。
(…今夜……何かが起きるのなら、出来上がる予定だと聞いていた他の五つの照明もお館様の元へ移動させなければならない。)
「ごめんなさい、私…今すぐ行かなきゃ……。」
予想外の言葉に杏寿郎は目を大きくさせてガバッと体を離し桜と視線を合わせた。