第59章 決戦に向けて動き出す
杏寿郎の懸念通り、杏寿郎が近くで睨みを利かせていないと桜に手を伸ばしそうになる隊士が何人も居た。
桜は治療に集中していてそれに気が付かない。
杏(この鈍感さ…胡蝶もさぞ苦労をしただろう…。)
「よし!杏寿郎さん、終わりました!!」
桜が良い笑顔を向けると杏寿郎も切り替えて太陽の様な笑みを浮かべ、病室に居る隊士達の顔を見渡す。
杏「俺が君達の面倒を見てやろう!!屋敷へ来ると良い!!!」
その言葉に孝宏だけが目を輝かせた。
―――
杏寿郎の稽古はやはりスパルタであった。
大抵の隊士は準備運動で悲鳴を上げる。
しかしそれでも去っていく者はいなかった。
それは杏寿郎が鞭なら桜という飴が居たからだ。
飴であることに加え、桜は隊士の前にユキの姿で現れ鍛錬を行っていた。
桜はユキの信仰の邪魔をしないようにと一切喋らなかったが、それでも隊士達は走る桜に話し掛けようと追うように走ったのだ。
結果、杏寿郎の稽古は予想と異なり上手くいっていた。