第11章 夢の中の人
杏寿郎はまた僅かな違和感に目を薄く開いた。
そしてすぐに頬を緩ませる。
杏「また会えたな。」
昼前の夢で見た柔らかな空気の女が、また腕の中で無防備に寝ている。
杏寿郎は自然とその女をふわりと抱きしめた。
そうして、どうしようもなく暖かく心地よい気分を噛みしめる。
しばらくしてから少しだけ体を離し、女の顔を見つめていると するっと髪が流れて顔にかかる。
杏寿郎はゆっくりと手を伸ばして髪を女の耳にかけた。
仕舞おうとした手が ぴたっと空中で止まる。
そして少し悩んだあと、女の頬を包むようにそっと手を当てた。
すると、やはり女はなんとも嬉しそうに頬を緩ませる。
杏「君は無防備にもほどがあるぞ。」
そう言いながらも女の顔を見て、杏寿郎の頬も緩む。
そして親指で頬をすりっと優しく撫で、目を細めた。
杏「君の名前を聞いてもいいだろうか。」
彼らしからぬ小さな声で杏寿郎は呟く。
しかし女は相変わらず穏やかな寝息を立てるだけで、起きてはくれなかった。