第58章 事件の裏側で
「そんな…我が子のように抱いて……、いや、確かに子供と言えるわね…。」
槇「呑気なことを言っていないで水を持ってこい!!」
「あっ!は、はい!!」
急いで実験に使っていると思われる大きな鍋に水を汲んで戻ってくると桜は腕の中から覗くランプに改めて目を遣り ランプに繋がっている蓄電器の小ささに目を見開いた。
「本当にすごい…。これを後世に残せないのが残念で仕方ないや……。成田さん、お水ですよ。」
そう言うと桜は固く抱き締めていたランプを取り上げて鍋の水を顔に浴びせ続けた。
その水量の多さに溺れかけた成田は目を大きく開くと酷く苦しそうにむせ始める。
槇「……何度も言うが俺は飲ませる水を持って来いと言っているんだぞ。」
「寝ていると飲みませんし、優しく呼び掛けるよりこちらの方が効率的です。幸いここは個人の休憩室ですし しばらくびちょびちょでも成田さんしか困りません。」
成「…ゔ………けほっ……相変わらず酷い言い草だなあ…。おはようございます、煉獄さん。それから おはよう、煉獄さん。」
「槇寿郎さんと桜です。どうして科学技術以外の事になるとそうダメダメになるのですか。それより…、」
桜は少し呆れた顔をしたが、すぐに避難させておいた陽のランプを手に取ると眩い笑顔を向ける。
「やりましたね!!!」
桜は両手に納まる大きさのランプと蓄電器に繋がる二つのスイッチを順番に点け、それに光が灯る様子をきちんと確かめた。
成田も自身がびしょ濡れな事を忘れて目をキラキラと輝かせながら子供の様な笑みを浮かべる。
そして二人が理解の出来ない会話を始めると、槇寿郎は飲み水を取りに行った。