第58章 事件の裏側で
「すごい…これが柱の力……。」
杏「普通だと思うぞ!!」
桜は卵黄と砂糖、牛乳、薄力粉を混ぜておいた物にメレンゲを潰さないように入れ、さっくりと混ぜていく。
「後は焼くだけですよー。これが先日言っていた前の時代の甘味です。簡単でしょう?」
桜の楽しそうな声に杏寿郎も嬉しそうな顔をして相槌を打った。
―――
千「……っ!!…すごい、初めての食感です…!おいしい…。」
杏「うまいッ!!!」
台所で試しに焼いた一枚のスフレパンケーキに蜂蜜を掛けて味見をしてもらうと思ったよりも好評であった。
それを見た桜は手を合わせて花のように笑う。
「わあ、嬉しいなあ。あ、杏寿郎さん私の分まで…、もう。せっかく三等分にしたのに。」
杏寿郎が大好きな食に関わる事であってもそういった褒められない行動を取るのが珍しいのか 千寿郎は驚いた顔をしている。
しかしすぐにどこか安心した様に微笑んだ。
千「皆さんを居間に呼んできます。こちらは焼きたてを食べてもらいたいです!」
「ありがとう!じゃあ皆の分も焼き始めてるね!」
杏「俺も焼くのを手伝おう!こちらの、」
千「姉上、兄上には火を使わせないでください。」
千寿郎の厳しい声色に以前何かがあったのだと悟る。
「わ、わかった。杏寿郎さん、お皿の用意をお願いします。」
杏寿郎は少し眉尻を下げたが『うむ!!』と返事をするとすぐに普段の笑顔に戻って皿を用意し始めた。