第58章 事件の裏側で
あくる日の早朝、桜はパチッと目を覚ますと昨夜蜜璃から届いたばかりの蜂蜜を取りに布団から起き上がった。
そしてそれを手に取ると緩む頬を頑張って引き締めながら母屋へ向かう。
(朝から甘いものなんて槇寿郎さんは怒るかもしれないけれど…待てない!!)
早速鉢合わせた千寿郎にメレンゲ担当の杏寿郎を起こしてもらうように頼むと桜は材料の準備をしていく。
(薄力粉に砂糖、それから、)
杏「桜!おはよう!!」
「おはよう、杏寿郎くん!」
杏寿郎は桜の頭を撫でながら 桜が疲れを治せる事を失念し変わらず顔色が良いことを確認するとにこっと微笑んだ。
桜はそんな事は露知らず、卵白が入った容器を手に取ると眩い笑顔を返す。
「これを角が立つ…こう茶筅を持ち上げた時にぴょんってなるまで泡立てて下さい!」
杏「……生卵に茶筅を使うのか?」
「そうです!頑張って!!」
桜はそう言いながら一回り大きい容器を用意してそこに氷水を入れ、『ここで容器を冷やしながらこの器に入ってる量のお砂糖を少しずつ入れてね。』と杏寿郎に押し付けた。
そして自身は他の材料を混ぜていく。
桜の予想通り杏寿郎がしっかりとしたメレンゲを作るのにそう時間はかからなかった。