第57章 ※聞き分けとお返し
杏「君は一般の男にも慣れ始めている。戦いを終えて前の時代に戻った君の事を考えると……、心配で堪らない。人目があったから掛けられるだけで済んだのだろう。最近まではどの様な生活をしていたのだ。」
意図的に前の時代の生活についてあまり深く詮索してこなかった杏寿郎はとうとうその話題について触れた。
「今は…女の人しかいない学校に通っていて、同じ学校に行っている親戚のお姉さんと一緒に暮らしてるの。ここへ来た日は特別な日だったから一人でお家を出たけど、普段はその人と一緒に過ごしてるよ。……とってもお世話好きのお姉さんだから心配しないで。」
桜は心配そうに杏寿郎の頬を撫でながら申し訳無さそうに眉尻を下げた。
それでも杏寿郎の眉は寄ったままだった。
杏「俺が側に行かなければならないな。」
「………………え…?」
杏「その時代に必ず会いに行く。君を守ろう。」
具体的に生まれ変わりについて口にされると "来世" という散々話題に上がって来ていた言葉が急に現実味を増す。
(戻った時代にも杏寿郎さんが居てくれたら…どんなに良いだろう……。)
「……………杏寿郎さん……。」
桜は名を呼ぶだけ呼ぶと思わず涙を溢してしまった。
杏寿郎は何故今泣いたのか分からず目を大きくした。