第57章 ※聞き分けとお返し
杏「すまない、もう少しの間見せていてくれ。」
杏寿郎は開き直ると腕を組み大きな目で桜の姿を堪能し始めた。
桜は当然困惑した。
「……え?、あの…、何を…………何で……?」
杏「これ程までに君を滅茶苦茶に出来るのは俺だけだろう。その様な姿を見ると満たされるものがある。」
「………………変態…。」
眉尻を下げた桜が若干引いた声色でそう言うと 杏寿郎はピクッと体を揺らして固まった。
杏(今の声色は…本気で言っているな。)
杏「ま、待ってくれ。…………いや、俺は変態なのだろう。それは認める。だが君も前に変態でも俺を受け入れると言ってくれた筈だぞ。」
「それは………、そうだけど…、」
そう言いながら桜は改めて自身の体を眺め、そして杏寿郎にチラッと窺うような視線を遣った。
「まだ男の人が怖くなかった頃、電車…、列車のような乗り物で学校に通ってたの。そこで毎朝こんな風にスカートにかけられて…。いつも学校に着いてから友達が先に気付いて『これは変態がすることだよ、気を付けなさい』って…、っ」
杏寿郎は予想もしていなかった話に思わず桜の肩を強く掴み、眉を顰めた険しい表情を浮かべて顔を覗き込んだ。