第57章 ※聞き分けとお返し
杏「消えた訳ではなく、耐えていたのだな。俺が無理に嫉妬させなくても、君は元より…。すまない。」
桜は杏寿郎に腕を回すと背けていた顔を戻し、自身も杏寿郎の髪に頬擦りをした。
「私が嫉妬を表に出した時は…、咄嗟に隠せなかった時か、とっても我慢できなかった時です。杏寿郎さんは…?」
杏「俺はあまり隠していない。だがいつも耐え難いと感じている。相手が不死川でなければ話に上がるたびに殺気を放っていただろう。…不死川の件でも放った時があったかも知れないが。」
(確かに杏寿郎くんの嫉妬はとても強い。相手の怯えようが尋常じゃないもの。杏寿郎くんは杏寿郎くんで我慢していなくても とても辛いんだろうな…。)
「では…、私はもう杏寿郎くんの前では "不死川さん" としか呼びません。他の人とも……、なるべく話さないです。だから、杏寿郎くんも嫉妬させる事はしないで。」
杏「不死川と二人でいる時は "実弥さん" と呼ぶのか?それは…あまり意味が無いような気がするのだが。」
「じゃあ蜜璃ちゃんと会う時、毎回空を見上げて姿を目に入れないようにできますか?」
杏「出来るぞ!!!」
「えっ、う……。」
『それで君が "不死川さん" と呼ぶようになるのなら一向に構わない!!』と杏寿郎が言うので桜は困り果ててしまった。