第56章 戦いを終えて
杏寿郎は不安を隠しきれていない桜の頭に大きな手を優しく乗せると少し屈んで目線を合わせてから微笑んだ。
杏「心配するな。必ず戻る。約束したろう。」
そう言って咲き続けている桜の手首の華を撫でる。
桜はそれを見るともう一度微笑みを浮かべて頷いた。
今度の笑みは無理をしたものではなかった。
それに満足すると杏寿郎はパッと切り替えて踵を返す。
杏「よし!出発するぞ!!ついて来い!!!」
杏寿郎は門を出るとあっという間に見えなくなり、継子達は様々な返しをしながらそれを追った。
「お気を付けて……。」
千「姉上、中へ…。」
「うん。」
戸を閉めると千寿郎は安心させるような笑みを浮かべながら桜と目を合わせた。
千「姉上のお茶とお華、楽しみです。」
「あんまり期待しすぎないでね。杏寿郎さんに色々と用意してもらって戸惑ってるよ。そうだ!」
桜はぽんっと手を合わせ千寿郎の顔を覗き込んだ。
急に近付いた顔に千寿郎は少し頬を染める。
千「な、何ですか?」
「私も杏寿郎さんに贈り物をしたいのだけれど思い付かないの。たくさん貰っているのに私は何も返せていなくて…。」
千「お返しですか…。十分返せているとは思いますが、兄上は命を懸けたお仕事をされているのでお守りなどはいかがでしょう?」
「それは…本人からも頼まれててもう作るつもりなの。髪の毛を入れて…。」
千「髪の毛…そうでしたか…。そもそも女性からの贈り物はあまり聞いたことがないので難しいところですね…、そうだ!」
千寿郎は何かを思い付いたようにパッと顔を輝かせた。
桜はそれを見て教えて欲しそうに首を傾げる。