第56章 戦いを終えて
「……んっ!!…んんーーっ!!!」
桜が暴れるのを無視して杏寿郎はいつの間にか八人に増えていた男達を冷たい目で睨む。
そして慌てて散っていく男達を見て息をついた時だった。
―――ゴンッ
桜が柔らかい体を利用して後ろの杏寿郎の股間を思い切り蹴り上げた。
杏「……っ…、良い、蹴りだが……、俺だぞ。」
「ぷはっ!…知ってますよ。着物の色、手の形と匂い、あと皆が逃げていく様子を見たら分かります。触れられても全く怖く感じなかったですし……。」
杏「よもや…分かっててここまで思い切り良く蹴ったのか……。」
桜は杏寿郎に解放されると振り返って少し申し訳無さそうな顔をした。
「最終試験かと…。わ、私の動きどうでしたか?自分でも結構避けれていたと思うのですが…!」
杏寿郎は桜の期待を隠し切れていない顔を見て 痛みに耐えながらもなんとか頭を撫でる。
杏「君が油断してしまうのではないかと思って褒めないでおく気でいたのだが…あの蹴りを見るに心配は無さそうだな。成果がよく見えた。頑張っているな。」
それを聞くと桜はパッと顔を輝かせた。
先程自身が拗ねていた事など忘れてしまっているかの様だった。