第56章 戦いを終えて
杏(油断も隙も無いな。桜の反応は…、)
桜は震えてはいたが拳を握りなんとか耐えている様だった。
一人の桜に男はあっという間に集まり今は五人。
流石に初めて相手にするには多いと判断すると杏寿郎は助けに入ろうとする。
しかし、手を掴まれそうになった時 杏寿郎が止めるより早く桜がそれを受け流した。
杏寿郎に言われた通り男を地面に押さえ付ける等の無茶はせず、桜は躍起になる男達の手を躱し続け 捕まる気配を見せなかった。
それが分かると共に桜は嬉しそうな表情まで浮かべて余裕を持ち始めた。
杏(男への恐怖心が少し薄れたようだな。だが…、)
杏寿郎はそうなる事で油断が生まれてしまう事を危惧していた為に手放しで喜べなかった。
そう上手くはいかないのだと教える為に静かに桜の背後に寄るとバッと片手で口を覆い、もう片方の腕で桜の体を腕ごと拘束して動きを封じた。