第56章 戦いを終えて
杏「そうだったのか!!そういった理由であの様にしょんぼりとしていたのだと思うと愛おしいな!!!」
人が周りにいない事を良い事に杏寿郎は桜を思い切り抱き締め その髪に顔を埋めた。
杏寿郎が頬擦りをする度に杏寿郎の柔らかい毛が耳や首元を擽り、桜は少し困った様に微笑みながらぶるっと身を震わせた。
「杏寿郎さん、くすぐったい。髪の毛が耳や首に当たります。」
杏「…………欲情してしまうか?」
杏寿郎の声が熱を孕むと桜の血の気が引いた。
「だ、だめですよ。お互い一回で満足できるはずがないです。もし任務が入ったら…、」
杏「むぅ。」
「むぅ、じゃないです。それにここはお外ですよ。」
杏「前にも言ったろう。外ですることは珍しくない。先程も大勢の男女が外で事に及んでいた。……だが、時間が足らないのは事実だな。覗かれても耐え難い。」
残念そうではあったが杏寿郎が諦めてくれたことに桜は胸を撫で下ろした。
杏「夜は夜で鬼が出ては雰囲気が壊れてしまうし…俺達はこの先ずっと外で出来ないのだろうか。」
「出来ません。…したいのですか?」
杏「うむ。君がより嫌がっ………君がより恥じる姿を見たい。」
桜は杏寿郎から体を離すと顔を覗き込んだ。
「嫌がっている姿を見たい?」
桜の冷ややかな目に見つめられると杏寿郎は喉をこくりと鳴らした。