第56章 戦いを終えて
杏「うまい!うまい!!」
「………………。」
ご機嫌で食べ始めてしまった杏寿郎の横で桜は少し眉を寄せながら箸をつける。
するとその顔は呆気なく蕩けていった。
「ふああ…おいしいぃ……。」
杏「だろう!!」
二人は先程の事をすっかり忘れると微笑み合ってから再び箸を進めた。
杏「うまい!!」
「ふふ、おいしい!」
杏「うまい!!!」
「おいしい!」
配膳して間もなく聞こえてきたその嬉しそうな二人の声にみちるは目を大きくさせる。
み(相変わらず似た者夫婦ね…食べたら忘れてしまったのかしら。)
そして例に漏れずみちるはその仲睦まじさを健一に報告しに行ったのだった。
―――
「ふぅ…ご馳走さまです。なんだか『おいしい』って口に出すとより美味しく感じるような…。」
杏「そうだな!俺もそれは実感している!!ご馳走様です!!」
杏寿郎は丁寧に手を合わせると桜を唐突に抱き寄せた。
不意を突かれた桜は呆けてしまった。