第56章 戦いを終えて
杏「む?随分と素直だな。抵抗されると思ったがもしかすると口付けても構わ、」
「か、構う。構うよ。びっくりしただけ。」
桜はそう言うと慌てて杏寿郎の腕の中から出ようとした。
しかし杏寿郎が腕の力を緩めない。
そんな腕を桜はぽこぽこと拳で叩いた。
「お外で…それもみちるさん達のお店でこんな事しないで。」
杏「触れているだけだろう。それに此処には誰も居ないし、みちるさんも暫く入らないと言っていた。」
杏寿郎は桜の頬に手を添えると膨れる頬を愛おしそうに撫で、そこに口付けを落とした。
そしてそのまま戸惑う桜の口を塞ぐように口付ける。
『触れているだけだ』と言われた直後に口付けられ、桜は眉を寄せながら杏寿郎の胸を強く押した。
杏(相変わらず弱い力だ。不意打ちにも弱い。)
そう思うと杏寿郎は漸く口を解放した。
「杏寿、」
杏「嫌ならきちんと避ければ良いだろう。何の為に訓練をしている。全く活かせていないではないか。」
「………杏寿郎くん以外の男の人から身を守る為であって 杏寿郎くんから身を守る為に訓練していたんじゃないよ。でもそうだね。杏寿郎くんといる時も警戒していた方がいいのかな。」
桜の少し冷たい声に杏寿郎はハッとした後 冷や汗を流した。
そしてすぐに腕の力を緩めると機嫌を取るように優しく桜の頬を撫でた。