第56章 戦いを終えて
杏「彼は…君を妹と言ったが年齢も近い歴とした男だ。それに年上で…、君に惹かれていた過去がある。」
「年齢は関係ないです。それに過去は過去ですよ。」
そこまで嫉妬させる気はなかった桜はそう言って訂正した。
しかしもう宥めるには遅く、杏寿郎の眉は寄ったまま険しい。
杏「関係無くはないぞ。君は……、俺は…、俺は君と同い年だ。だが、たった一つとはいえ歳上となるとやはり頼り甲斐が違うのだろう。その証拠に君は随分と早く不死川に懐いた。そして過去の事とはいえ、惹かれた事があるという事実がある以上、君が彼の心を動かす力を持っていることに違いはない。」
「懐いたって…実弥さんも杏寿郎さんも私を猫か何かのように言うん、」
杏「不死川さんか杏寿郎くん、だろう。」
杏寿郎の声が低くなると桜は思わず口を閉じた。
(言い返しすぎたかな…。)
杏「桜、他の男の話はやめよう。気が荒ぶってしまう。どうしても続きをしたいのなら離れに戻ってからにしてくれ。」
そんな事をしたら嫉妬した杏寿郎に抱き潰される気がして桜は急いで首を横に振った。
「さね、不死川さんの話をしたい訳ではないので…。」
杏「君、今話している事と別の事を考えてそう答えたろう。」
桜の肩が分かり易く跳ねた。
それを見て杏寿郎は目を細める。