第56章 戦いを終えて
「次はどこへ?」
杏「随分と付き合わせてしまったからな、甘味処で少し休憩をしよう。」
「わ…!!」
甘い物も大好きな桜は思わず目を輝かせる。
それを見た杏寿郎は可笑しそうに笑った。
杏「そんなに嬉しければ毎日……、と言いたいが俺達が外に出る時間帯を考えるとなかなか難しいところだな。だが出来る限り多く寄ろう。」
「…そんな事を言って下さるだけでもとっても嬉しいです。」
桜はほわほわとした笑みを浮かべながら首を傾けて杏寿郎の顔を覗き込む。
その笑みを愛でるように杏寿郎は目を細めた。
手を繋ぎそんな会話をしながら見つめ合う二人の様子を街行く人々は目を丸くさせて見ている。
前回街へ来た時のブレーキ役であった桜は今回もそのつもりであったが、この二人のやり取りに随分と慣れてしまっていた。
だが、人前で甘い空気をここまで隠さない男女は稀である。
二人は非常に目立っていた。
杏寿郎はその事に気が付いていたが、桜に見惚れる男が桜の瞳の色とその先に居る自身を見て残念そうな顔をする度に心が満たされるので黙っていたのだ。
そして桜が自身の表情を自覚しないまま行動を続けるようにと只々優しく甘く接したのだった。