第56章 戦いを終えて
杏(色は分からずともこの愛らしい膨れた頬も撮れたか。)
「何で笑ってるの…!怒っちゃいますよ!」
杏「む、もう怒っているのではないのか?愛らしい頬が膨れているぞ。」
そう言いながら頬を突かれると桜は咄嗟に反応出来ず、きょとんとした顔をしている時にシャッターを切られてしまう。
写真屋の大きなフラッシュから放たれる光で我に返ると桜は恥を覚えて顔を赤らめながら眉尻を下げ、敵わないことを悟り大人しくなってしまった。
杏「すまないな。これも思い出作りとして協力してくれ。俺が君を失った後もきちんと生き、そして耐えられるように。」
そう言われると桜はハッとし、視線を下げたままこくりと頷いた後 微笑みながら顔を上げた。
そして自ら杏寿郎の胸に手をついて身を寄せたのだった。
―――
写「いやぁ、こんな撮影は初めてでしたよ!今日はもう閉店しなければ…何もかも使い切ってしまった…!出来上がる迄 お時間はかなり掛かってしまいますが…、」
杏「構わない!!今は本人が居るのでな!!!」
写「……はぁ。」
写真屋のまだ若い店主は病に罹っているようには見えない桜を見て少し首を傾げた。
それから杏寿郎は写真を撮りに来たにしては多い金額を支払い、桜の手を引いて写真館を後にした。