第56章 戦いを終えて
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「手を繋がなくてはなりませんか……?やっぱり手を繋いで歩いている男女はいませんよ。私もだいぶ男の人に慣れました。鬼殺隊じゃない男の人も怖くないかもしれな、」
杏「それなら繋ぐ必要があるな。頼むから危機感を捨てないでくれ。」
「うっ」
罰が悪そうに視線を横に向ける桜の手をパシッと掴むと杏寿郎は街へ向かって歩き始めた。
そしてまだ眉尻を下げる桜を見つめる。
桜は以前街に出た時と同様に薄く化粧をしていた。
杏(気のせいだろうか。前回も酷く愛らしかったが…益々愛らしくなった気がする。只でさえ街では二度も男に攫われているのだ。十二分に気を付けなければならないな。)
「…杏寿郎さん、どこかおかしかったでしょうか…?」
白地の余所行きの着物を身に纏う桜はそう眉尻を下げながら杏寿郎をおずおずと見上げた。
その困った様な不安そうな顔に杏寿郎はビクッと体を揺らす。
杏「……自由に手を出せない時にあまりその様な顔で見上げないでくれ。」
「普通の顔ですよ。杏寿郎さんの趣味がおかしいんです。」
桜は少し顔を赤くさせながら視線を外すと困った様な声色でそう返した。