第56章 戦いを終えて
(……鬼舞辻を倒すのに絶対欠かせない子がこんな近くにいたなんて。教えない方がいいのかな。大きな責任を感じて空回ったりしたら未来が変わってしまうかもしれない。…それにしても…列車で感じた印象と違って随分頼りがいがある雰囲気に、)
杏「桜?」
考え事をしていた時に名を呼ばれ、桜は肩を跳ねさせる。
その様子を杏寿郎は面白そうに見つめた。
杏「君の元へ行く際、胡蝶と不死川に何も言わずに飛び出してしまった。随分と心配を掛けただろうから君は胡蝶に鴉を飛ばしてくれ。不死川にはもう要を送った。」
「わ、わかった!ケンタ!!」
桜は急いでケンタを呼ぶとしのぶに無事を報せるように伝えて飛ばす。
「私…突然移動したから持っていた桶を落としちゃったでしょう。廊下が杏寿郎さんの鼻血が混じった水でびしゃびしゃに…、」
杏「そう考えると居た堪れないな!!流石にもう掃除されてしまっただろうが、次に蝶屋敷へ行った際にはよくよく謝らなければ…。」
責任を感じている様子の杏寿郎を桜は驚いた顔で見つめた後 眉尻を下げて笑った。
―――
槇「なっ、なに、…ごほっ……ぅ…、」
やはり上弦を倒すという事は大きな事だったらしく、報告された槇寿郎はお茶を取り落として咳き込んでしまった。
対して千寿郎は目を輝かせている。
千「上弦を…!!兄上が!!」
杏「何度も言うが戦ったのは音柱の宇髄とうちの継子三人だ!!俺はほとんど関わっていない!!!」
それが聞こえているのかいないのか、千寿郎は杏寿郎の朝餉に芋を入れるか迷っているようだった。