第56章 戦いを終えて
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炭「少し刃こぼれしてしまったなあ…。」
帰り道、善逸の隣で炭治郎が困った様にそう呟く。
その心底困った声と音に善逸は首を傾げた。
善「鍛冶屋に出せばいいじゃん。」
炭「それが……すっごく怒られると思うんだよね…。それはもう鬼のように。まだ使えるけど持ってあと二ヶ月かなあ……はあぁ………。」
善(……よ…よっぽど怖いんだな。)
「杏寿郎さん、上弦を倒したって…やっぱりすごい事なんですよね。伊黒さんの反応は薄かったけれど…。」
杏「うむ。ここ百年は無かったことだ。だが数字が上がれば桁違いに強さも変わるだろう。」
「…なるほど……。」
杏「とにかく帰って父上と千寿郎に報告だな!!」
「うん!!」
桜は花咲くように微笑むと杏寿郎の胸に再び顔を埋めた。
そして大きな心臓の音を聞く。
(……上弦と戦って勝った。最初から参加していなかったし何人もいたとはいえ…今度は無傷だ。やっぱり杏寿郎さんって強いんだ。それに…、)
桜は胸から顔を離すと後ろを走る炭治郎に目を遣った。