第11章 夢の中の人
千「桜さん!?」
「千寿郎くん、お出迎えご苦労さまー。」
杏寿郎に担がれながら微笑む桜を見ると、千寿郎が驚いた声を上げる。
杏寿郎は千寿郎の頭をもう一度撫でて、"中へ入ろう!" と笑った。
杏「桜。父上と何をしていたのか訊いてもいいだろうか。」
廊下に響く、静かな杏寿郎の声に桜は複雑な気分になる。
『杏寿郎は成人しているのだろうか。』
『もししていたとして、槇寿郎と晩酌をしたことはあるのだろうか。』
そんな思考に桜は ふるふると頭を振る。
(絶対に杏寿郎さんは成人だし、恐らく父親と晩酌をした事もない。私はきっと杏寿郎さんにとって大事なことを先に経験してしまったんだ。)
桜は口をきゅっと結んでから、口を開いた。
「晩酌をしていました。」
杏「そうか!!!」
呆気なく返ってきた声が予想に反して明るく、桜は驚いた。