第55章 遊郭に巣食う鬼
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その少し前、炭治郎は自身に深い傷を付けて満足し、去ろうとする堕姫を見ながら槇寿郎の言葉を思い出していた。
槇『竈門君…。日の呼吸の選ばれた使い手は君のように生まれつき赤い痣が額にあるそうだ。』
炭(俺の痣は……生まれつきのものじゃない。俺は選ばれた使い手のものじゃない。でも、それでも、力が足りずとも……、人にはどうしても退けない時がある。)
炭治郎は聞こえる悲鳴、悲痛な泣き声から怒りが湧き上がると跳躍し 屋根を歩く堕姫の足を掴んだ。
炭(俺は絶対に許さない。)
そしてそのまま足を斬り落とす。
炭「失われた命は回帰しない。二度と戻らない。」
堕「な、お前…怪我が、」
炭「なぜ奪う?なぜ命を踏みつけにする?何が楽しい?どうしてわからない?」
炭治郎の言葉と呼び起こされる細胞の記憶に最初は動揺したものの、堕姫はすぐに開き直る。
堕「美しく強い鬼は何をしてもいいのよ…!!」
炭「わかった、もういい。」
炭治郎の言葉を皮切りに再び戦闘が始まった。