第10章 お見送りとお父さん
―――カターンッ
「……………。」
槇「……………。」
猫の手からおちょこが滑り落ち、音を立てて床に落ちた。
ターッとこぼれたお酒が広がっていく。
―――ザッ ザッ
聞こえてきた足音に槇寿郎と桜は二人して門の方に目をやる。
足音の主は気配を感じ、一度足を止めると縁側へ近付いた。
そして目が合う三人。
杏「……父上?」
見廻り帰りの杏寿郎は、この寒い季節に縁側にいる奇妙な組み合わせの二人を見つめた。
「ね!?」
突如桜が声を上げながら立ち上がる。
「杏寿郎さんが来るとこうなるんです!!!」
槇寿郎に何故か嬉しそうに言いながら、桜は掛け布団にお酒がつかないように退ける。