第55章 遊郭に巣食う鬼
杏「羽織りと袴を頂けるとは助かったな。」
「はい。良い女将さんでよかった…。」
そう胸を撫で下ろす桜の横で何処を見ているのか分からない笑みを浮かべた杏寿郎がスゥゥッと息を吸い込む。
「……?」
杏「宇髄ーーーッッ!!!!!!」
その大声に周りの者は耳を押さえてしゃがみ込んだ。
それは桜も同じで目を丸くさせながら震えていた。
「な、な、なに……なにして…………、」
杏「彼は耳が良いんだ。む。」
杏寿郎が自身の胸元を見るといつの間にか紙が挟まっていた。
それを抜いて開いてみると――、
『目立ち過ぎだ馬鹿野郎、花街の外まで来い』
杏「宇髄か。相変わらず速いな。桜、行くぞ。」
「は、はい……。」
桜はふらふらとしながら立ち上がると杏寿郎に手を引かれながら遊郭を後にした。