第55章 遊郭に巣食う鬼
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炭「煉獄さん!桜さん!」
「炭治郎くん!さっきは置きざりにして飛び出してごめんね…!」
杏「竈門少年、桜を守ってくれてありがとう。感謝する。それから君の師範として申し訳ないのだが俺は桜を連れてすぐにこの任務地を離れなければならない。宇髄が長く追っていた鬼だ。厄介な相手である可能性は非常に高い。気を引き締めなければならないぞ。」
炭「はい!!俺達の事は大丈夫なので宇髄さんに会ったらすぐ遊郭を出て下さい!!」
杏「うむ!ありがたい!そうさせて頂く!!桜、行くぞ!!」
「はい!炭治郎くん、無理はしないでね…!!」
『はい!!』と笑顔で返事をする炭治郎と別れて店の出口に向かうと、華やかで不思議な筝の音色を聴きに集まってきた野次馬が溢れていた。
「わ、まだいる…。杏寿郎さんの声、よっぽど衝撃的だったようですね。そういえば建物が揺れていましたよ。」
杏「恐らく違うと思うぞ。」
良子も筝の演奏を聴いていたが桜を引き止める事なく、杏寿郎から畳の弁償と着物代、天元に支払った代金を多めに受け取ると『多く貰う代わりに…』と、血まみれの着流しを隠す為の羽織りと袴を訳は訊かずに手渡し、微笑んで送り出してくれた。