第55章 遊郭に巣食う鬼
「杏寿郎さんだ……っ!!!」
桜は驚く炭治郎を置いて部屋を飛び出すと店の玄関まで走り、野次馬を掻き分ける。
「杏寿郎さん!!杏寿郎さん…っ!!!」
杏「桜!!!…何て格好を……ッ!!項を出しすぎているぞ!!!」
隊服ではなく着流しを身に纏っている杏寿郎は桜に走り寄って抱き上げると普段と違う化粧を見て固まる。
杏「…………………………非常に美しいな。」
「杏寿郎さん!それどころじゃありません!!」
杏「女将さん、彼女を買っても良いか。」
良「……………………え……?」
「買うも何もないでしょう!お話しならいくらでも、」
杏「やはり君は知らぬようだな。」
そう言いながら杏寿郎は良子に金を手渡す。
杏「まだ足りないだろうか。」
良「い、いえ…十分過ぎるくらいです……ですが、桜。お前の言っていた夫はこの人で間違いないんだね…?」
良子は桜を売ったかも知れない杏寿郎を信用し切れず桜の心を守ろうとしていた。