第55章 遊郭に巣食う鬼
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(って言っても炭治郎くんとバラバラになっちゃったな…。)
女「次はお筝を弾いてみて頂戴。」
「は、はい。」
桜は柔らかい雰囲気を纏ったときと屋の女将、良子に頼まれると なるべく目立たない様にと簡単な曲を弾いた。
しかし化粧に彩られた整った顔と伏せた目から出る色気、品のある仕草、どれもが人の目を引き 奏でる音も柔らかく、旋律などはその部屋の中にいる者も覗き見をする者も、誰もが気に留めていなかった。
良(お茶の味も点てる所作も格のあるものだったわ。こんな娘さんが何故売られて…。廓詞は使えてないし 話しも上手いとは言えないけど、方言がある訳ではないし 拙い話し方が持ち味にもなっている。安いお客に買わせるには惜しい子だね…。)
桜の演奏を止めること無く最後まで聞くと 良子は他の遊女に任せず自ら着物を誂えに桜を連れて部屋を出た。
(私は鈍い方だと自覚しているけれど、今まずい事になっているのは分かる…。この感じ…見てた皆の空気…ミスコンで勝ち進んだ時と似た感覚がある……。)
それでも桜はときと屋の皆が優しかった為 酷い不安は感じていなかった。
(皆本当に優しいし、女の子ばっかりだし、炭治郎くんもいる。落ち着いてなるべくこれ以上目立たない様に杏寿郎くんを待とう。)