第55章 遊郭に巣食う鬼

炭「桜さん、とても危険だ。思い切り流されているぞ。」


善「うん…。それに俺等があと二つの店に無事買われたとしてもさ…桜さん、一人で帰ることになるんじゃ……。」




二人は顔を見合わせると頷く。




炭「どちらかが一緒に買われれば良い！俺達で桜さんを守るんだ！！」






それから炭治郎が買われる際、天元は同様の言い訳で桜を売らないようにした。


しかし、店を去る前に善逸が桜に向かって声を上げる。




善「そういえば桜さん、肩に蜘蛛が乗ってますよ。」


「えっ！や、やだ…っ！！取って取って！！！」




ハッとした時には遅く、天元の機嫌を欠いた顔に見送られながら桜は炭治郎と共にときと屋に入って行った。




(善逸くん、何であんなことを…。)




そう呆然とする桜に炭治郎が耳打ちをする。




炭「桜さん。俺が煉獄さんの代わりにあなたを守ります…！俺達が上手く売れても桜さんは一人で帰らなくてはならないでしょう？」


「あ…それで……、わざと…………？」



炭「はい！善逸と相談したんです！！」




桜は目を大きくさせて眉尻を下げると再び涙を滲ませ、赤くなる炭治郎を抱き締めながら礼を言った。