第55章 遊郭に巣食う鬼
それを見て天元は心底可笑しそうに笑う。
天「何だ、お前!派手に楽しそうじゃねーか!!ここに連れて来られてそんな顔する女はお前以外にはいねぇだろうな。って喜んでてもあいつの嫁である以上 客と寝させる訳にはいかねーし……、お前上手く振られろよ。」
「え?振る、じゃなくて…?」
天「花魁でもない遊女が客を振ってどうすんだよ。殴られても知らねーぞ。とにかく萎えさせる事を言うんだ、いいな。俺は言ったぞ。」
「……………………。」
(殴られるのはまずい。本当に…。ううん、何言ってるの私…男の人と二人きりになること自体がまずいじゃない……!)
恐怖を感じない鬼殺隊の男に慣れてしまっていた桜はそう思い直すと再び天元を見上げる。
「私、前にも言いましたが男性恐怖症で……!」
天「あ?誰より男前な俺様と難無く話せてんだから大丈夫だ、安心しろ。」
「…………っ!」
女「ちょいと旦那。この子とこの子、荻本屋で引き取らせて貰うよ。いいかい?」
桜が必死に訴えるように天元の着物を引っ張り その真剣な目に天元が気を取られた時、狐の様な釣り目の女性が桜と伊之助を指差しながらそう言った。
その言葉に余所行き用の笑みを浮かべた天元が胸の前で手を合わせる。