第54章 嵐前の日常
腹を無残に切り裂かれた子供がパッと見ただけでも五人倒れていた。
そうして動けなくなった子供を順に食べているのか、鬼は近くの子供の足を掴んで引き寄せる。
そして桜の目の前で再びパキパキッと軽い音をさせながら足を喰い千切った。
「……………………。」
鬼「お前、やたらと動じないと思ったらその服…鬼殺隊だなあ?でも刀を持っていないじゃないか。忘れ物は良くないぜ。」
そう言って鬼が笑うと桜は更に眉を顰めたが、鬼を怒らせてしまうような言葉は必死に飲み込んだ。
(杏寿郎さんが絶対に来てくれる。鬼は私をなんとも思っていない。その証拠に呑気に食事を続けてる。まだ殺されない可能性は十分にある。)
鬼「お前、鬼殺隊なら知ってるんじゃねぇか?最近お前ら鬼狩りの治癒力が可怪しい。死ぬような怪我を負った鬼狩りが生きていたって不快な感情があの御方から直接伝わってきた。」
―――パキパキッ
鬼「…つまりなあ、からくりが分かればあの御方に褒めてもらえるかも知れないんだ。ほら、話せば逃してやるぞ。だってお前、笑えるほど弱いだろう?なあ。」
そう言って笑う鬼の口が三日月のように綺麗な弧を描く。
その中にある血塗れた牙が光ると桜は嫌悪感から吐き気を催した。