第54章 嵐前の日常
頼「え……、泊まっていかれないのですか?」
杏「うむ、任務が終わればそのまま帰るつもりだ。訳あって弟に一日でも多く桜を会わせてやりたい。それに桜を連れて行きたい場所もある。」
頼「そう…ですか。分かりました。…ご武運を。」
頼勇は残念そうに眉尻を下げながらもそう言いながら微笑み、深々と頭を下げて一行を送り出した。
―――
任務地に着き、他の隊士と合流した杏寿郎達が戦闘を始めると 桜はいつも通り刀の音を聞きながら離れた場所で胃痛と戦っていた。
(誰も怪我しませんように…。)
その願いが届いているのか桜の耳にはまだ痛みを訴える声は聞こえてこなかった。
(善逸くん、耳が良いはずなのに何であんなに叫べるんだろう。他の人の声が聞こえづらい…。でも苦戦中とは言え、まだだれも傷付いていないはず…。このまま、)
鴉「桜様!蝶屋敷ヘ至急オ越シクダサイ!!急患デス!!」
「…………え、でも、私……、」
唐突に現れた鴉が放った緊急事態の報せに桜は酷く動揺した。