第54章 嵐前の日常
大事な人達がいる目の前の戦闘では怪我人がまだ出ていない上に柱が居る。
しかし片方は恐らく自身が行かなければ助からない命がある。
(だけど…こっちだってこれから何が起きるか…列車の任務の時みたいにまたあの鬼がいきなり来る可能性だって、)
鴉「オ急ギ下サイ!!」
鴉の声に桜の肩が跳ねる。
(…………何してるの、私。私の使命は人の命を救うことなんだ。私は…私が行かなきゃ。)
「ケンタ!杏寿郎さんに私は蝶屋敷へ行くと伝えて!!全速力で走るから一人で大丈夫だと!私が通る道も見えなくなるまで見て杏寿郎さんに教えて!!」
そう言うとケンタの返事を待たずに桜は走り出した。
―――
し「桜さん…!お、お一人で……、」
「案内して下さい!!」
桜は明らかに顔色を悪くさせたしのぶに病室を教えてもらうと手早く治し、嵐の様にすぐさま蝶屋敷を走り出た。
し「桜さん!!私はまだここを離れられないんです!待って…ッ、」
しのぶの珍しく余裕無く叫ぶ声が後ろで聞こえたが桜は脚を止めることが出来なかった。