第54章 嵐前の日常
(手まで握らなくても…、昨日の反動かな…。)
杏「今回の任務、犠牲者が決まった所に住まう者ではないので正確な被害人数が分かっていない。向かうのは俺達が初めてなので鬼殺隊士の犠牲が出ている訳ではないが、想像より喰われている可能性はある。気を抜くな!」
炭「「はい!!」」
しっかりと返事をしたのは桜と炭治郎のみで善逸は泣きじゃくり、伊之助は今まさに単独行動を取ろうとしていた為 杏寿郎に首根っこを掴まれた。
伊「オイこら離せ!!あっちにいるっつってんだろーが!!漆の型で見つけたんだよ!!」
杏「うむ、それは初耳だぞ!!お手柄だな!!案内してくれ!!!」
伊之助は褒められて解放されるとすぐに鼻息を荒くして得意気に先導し始める。
杏寿郎はもう桜を自身の隣に置くこと無く 後ろに気を配りつつ伊之助に続いた。
桜は伊之助の優れた索敵能力に驚くも すぐに口を結んで気を引き締め、ユキの姿になると少し距離を空けて走り出した一団を追った。
杏「…………いるな。」
低く小さくも芯のある声で杏寿郎がそう言うと皆ザザッと足を止めて小さな山小屋を木陰から見つめる。
善逸はまだ鼻を啜っていたが、道中炭治郎に宥められ続け なんとか涙は止まっていた。