第54章 嵐前の日常
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「ちょっと薄暗いですね。猫の目…猫じゃないけど、この目だから問題なく見えますが……。」
杏「これが "ちょっと薄暗い" で済むとは頼もしいな。ほとんど日が落ちた時と変わらん暗さだぞ。」
「えっ…、あ、そういえば善逸くんが泣いてる…。暗くて怖いんだね。」
杏「いや、彼は元より泣いてることが多いな!」
「え……そうなんだ…。」
常人の速度で歩きながら進んでいた為 そう言いながら桜は暗さを確かめるように人の姿に戻って困った様に微笑んだ。
「わ、本当だ…木が大きくて暗い。ここまで暗いといつ鬼が出てくるか分からないから この速度で探すうちは目立つ姿を封印しておくね。出てきたら退ってユキの姿で待機する。」
杏「うむ!そうしてくれると俺も安心だ!!」
杏寿郎は任務故にピリッとした空気を纏いながらも変わらぬ笑顔でそう言うと桜の手を握る。