第54章 嵐前の日常
伊「ギョロギョロ、お前じゃなくて俺が見つけたんだぞ。」
「うん、伊之助くんすごい…。あんな遠くから分かるなんて。私は全く…なんにも分からなかったよ…。」
杏寿郎に張り合おうとした伊之助は山小屋から見えない位置まで退った桜にそう小声で褒められると再び得意気になって満足そうに腕組みをする。
その時、鬼も善逸の鼻を啜る音に気が付いたらしく 山小屋の戸がギシッと鳴って開いた。
善「ひぃっ!!」
炭「しっ!!来るぞ!!!」
杏「桜は俺等の姿がぎりぎり見える範囲内で出来る限り退がれ!!三人は前へ出ろ!俺が補助をする!!何も情報が無いので血鬼術によくよく気を付けるんだぞ!!」
善「はぁっ!?な、前って、」
炭「分かりました!!善逸、伊之助、行くぞ!!!」
伊「命令すんな!!言われなくても俺がすぐ斬ってやるよ!!!」
(だ、大丈夫かな……。)
出て来たのは山の中には不似合いな綺麗な着物を着付けた髪の長い美しい女の鬼だった。
よく見れば山小屋もきちんと手入れをされていて薄気味悪い訳でもなく ただ山に住んでいる少し風変わりな女性のようにも見える。
実際、彼女は鬼の目と牙を隠しており 気配を察知出来る人間でなければ美しい彼女に気を許してしまいそうだった。