第54章 嵐前の日常

「それはそれで楽しそうです。」


杏「俺は複雑だ。」


「杏寿郎さん、男の子の子どもが出来たら子どもにも嫉妬してしまいそう。」




その言葉に杏寿郎は考える様に眉を寄せる。




杏「確かに子どもが幼ければ母親の君は付きっ切りになってしまうのだな。…俺には構ってくれなくなるのだろうか。」


「……ふふふ。」




早くも落ち込んだ様子の杏寿郎に笑いを堪え切れずに漏らしてしまうと杏寿郎は心外そうな顔をする。




杏「返事を、」

炭「煉獄さーん！お話を聞かせてくれる方がいらっしゃいましたー！！」



杏「……うむ！！すぐ聞こう！！！」




杏寿郎は一瞬複雑そうな顔をしたが、すぐに切り替えると身篭っているのか腹を擦りながらゆっくりと歩いてくる女性の元へ桜の手を引きながら歩いて行った。




(そういえば他の隊士さんいないのかな。身内だけの任務は初めてだ…。手を引かなくても問題ないんじゃ……、)









女「申し訳ないけども ここを通るのは知らない人ばかりだからね…。『人がいなくなる』と噂に聞いたぐらいで私達に分かる事なんてほとんどないよ。」


杏「噂は何処で聞いたのか訊いても良いだろうか！！」




女は杏寿郎の大きな目と常に浮かぶ笑み、大きな声に圧倒されて声が出なくなった。