第54章 嵐前の日常
「善逸くんは騙されやすいんだね。私と同じだー。」
何故か嬉しそうに手を合わせる桜に炭治郎は心配そうな目を向ける。
対して善逸は不可解そうな顔をした。
善「桜さんも今の仕事、本当はしたくないんですか?」
「ううん、これは私の意志だよ。与えられたものではあるけどね。」
桜に即答されると善逸は『やっぱり俺と一緒じゃないじゃん…。』と言いながら俯く。
「『怪我を治したい』って思いが一番初めに湧いた気持ちだったけど、今は『大事な人を守りたい』って気持ちもあるんだよ。善逸くんもそう考えてみたらいいんじゃないかな。」
手を洗いながら禰豆子を思うと 善逸も同じ少女を思い浮かべたようで黙り込んでしまった。
炭(この話で善逸が否定をしないなんて…よっぽど禰豆子を大事に思ってくれているんだな…。)
そう思いながらスンスンと匂いを嗅ぐと、下心のような不純な気持ちを感じ取ってしまった炭治郎は笑顔のまま遠い目をした。